鉢植えサクランボ栽培




暖地桜桃
は一見サクランボのようですが一般的なサクランボとは全く異質の観賞用の品種です。
*サクランボとは近種ではあるがサクランボでは無い別種。

*結果習性等の特性が大きく異なる為、サクランボの育て方を参照すると失敗します。

同じ桜桃とは付いても暖地桜桃はサクランボでは無く暖地桜桃と言う別な植物と言った方が的確で
果実品質は非常に劣り、果物として収穫したいと思えるレベルには無い為
収穫も目的のひとつとしてサクランボを栽培する場合には
暖地桜桃は導入しないようにします。

暖地桜桃の栽培方法は当HPを読んでも無駄なので
暖地桜桃の紹介をしている他所を参照下さい。


*当HPでは甘果桜桃のみをサクランボとして表記しています。




サクラ属の果樹を栽培する場合、一番最初に知っておかなければならない事は
剪定や摘心等の果実を収穫する為の管理方法では無くプラムポックスウイルスの存在です。







果実が小粒で結果習性や管理方法から
鉢植えで小さく仕立てたまま収穫するのには
最適な特徴を備えています。

鉢栽培の場合は植え付けて3〜4年も育てれば
誰でも少量の収穫には至ると思いますが
3年も4年も育てて
ショボショボと1鉢に10数粒では面白くありません。

*植付け〜収穫までの年数は管理能力次第です。

難しいからこそ育て甲斐も有り
奥深さと面白さを感じる果樹です。



2014 サミット 500円玉大

他の殆どの果樹同様に売り物の果実は見た目だけは立派ですが、味は樹上完熟果とは比較にならない程度の低グレードで
ハッキリ言ってしまえば不味くて購入する気など起きません。

サクランボ・プラム・桃はその中でも、その傾向が顕著なので、売り物の果実で品種の優劣の判断はしない方が賢明です。




苗は生産業者(リンク参照等)から購入する素掘り苗の方が
取次ぎ販売店や園芸店に流通する根を切られたポット苗よりも遥かに安価で良質です。

有名な台木にコルトと青葉が有りますが
鉢栽培の場合はコルトと青葉の台木による差は無い事が園芸試験場の10年間の比較試験で判明しています。

*ダーレン台はヒコバエの発生が多く生産業者の売り文句とはかけ離れた印象で
コルトと青葉の差の無い事から、購入するのは安価でウイルスフリー苗の多い青葉台がお奨めです。




2014 香夏錦





サクランボ栽培の第一歩は樹形作り。

地植え・鉢植えに関らず営農の樹形が理想ですが
その研究も日々進化しています。
基本的には樹勢を抑え込む為に発生した枝を誘引します。

サクランボの樹形に関する研究論文では
主枝を下げる角度は仰角で30〜45度以下が
花芽の着生・結実率・果実品質に優れ
更に主枝から発生する側枝は水平まで下げます。
*30度以下が管理し易く好結果





幅を取りたくないので誘引せずに上に伸ばしたい
購入時の長い幹を切るのが勿体無い
等は栽培する人間の都合ですが

人間の都合を排除し
結実する為の果樹の都合を最優先しないと
上手くいかない樹種の代表です。

果樹の誘引は結実させる為に行うものであり
樹形の好みで行うものではありません。


2014 紅ゆたか

関東中央内陸部・酷暑地域の当園でも収穫に支障は無い


良い樹形

しっかりと誘引した事で頂芽優勢が分散され枝元から枝先まで満遍なく開花結実する
各枝の役割が明確で樹形の維持がし易い
樹高が低く強風でも鉢が転倒しない
日照を考えた枝の配置がされている

*満開時には花と葉で主幹以外の枝が殆ど見えない


駄目な樹形

誘引があまい・枝数が多過ぎる事で枝が禿げ上がり枝先近辺にしか開花結実しない
樹幅よりも樹高の方が長く頂芽優勢が働きやすい(1本整枝を除く)

*満開時に花と葉が所々にチアリーダーのポンポンの様に点在






サクランボ栽培のコツは病害虫防除・誘引・剪定・摘心・施肥・潅水と総合的な管理が必要な中で
誘引・摘心・施肥・病害虫防除が特に重要な管理項目となります。


2014 紅きらり



生らし過ぎると「味が落ちる」「隔年結果の原因となる」ので注意します。

特に1本整枝は経済栽培10年とされている為、隔年結果などさせている様では
3年目から収穫を開始出来たとしても4回収穫したら終わりになってしまいます。

鉢植えによる経済栽培では隔年結果での栽培など有りえません。


2014 佐藤錦・大泉系



落葉果樹としては耐寒性が低く、佐藤錦では−15℃に8時間以上晒されると花芽の枯死が発生し
−20℃では花芽の枯死に加え樹体の生育に悪影響を及ぼします。

耐暑性は強く関東平野のほぼ中央、内陸部の酷暑地域に位置する当園の環境でも全く問題はありません。





2014 紅きらり

果皮色が黄色味を帯びてきた時が雨避け開始のサイン

サクランボは収獲間近に雨避けが必要です。
果実が水を吸って裂果してしまう事を防ぎます。

果実が変色を始めてから収穫までの短期間
雨の当たり難い軒下等に鉢を移動します

自家結実する極一部のアメリカンチェリー(海外品種)や
紅きらり(自家結実率15.4〜33% 山形県果樹試験場調査)
さおり(自家結実率9.8〜22.4% 山梨県果樹試験場調査)
などの品種もありますが
自家結実しない品種が殆どなので
相性の良い複数の品種を揃えると実生りが良くなります。

*国産品種で自家結実性が正式に確認されているのは
紅きらり・さおりの2品種のみです。


いずれにしろさおり程度の自家結実率では受粉樹が必要になり自家結実性は無いと一緒です。

低温要求量が満たせず受粉に困る程に開花期がズレてしまう場合は受粉樹を用意しても無駄であり
複数品種の開花期が揃い相互受粉が可能であれば自家結実性に拘る意味がありません。

以上の事から「基本的にサクランボに自家結実性は無い」と考えた方が良いです。




海外産出品種について


日本では欧米産出のサクランボを総称してアメリカンチェリーと言っていますが
アメリカンチェリーと言う品種の木は存在しません。

アメリカンチェリーと言う名称で流通している苗は欧米産出の品種不明の苗であり
国内情報では特性等は調べようが無く、知っている人間も皆無と言って過言ではありません。

欧米産出品種の特性や栽培方法を知りたければUSDA等産出国の情報を参考にするしかありません。
*但し、日本に導入されている品種はclassicと称され資料探しは困難です。

ビング・レーニア・バン・セネカ・ジャボレー・サミット・ビック
ユタジャイアント・マーチャント・モロー等の多くの「アメチェとしてお馴染みの殆どの品種」は
USDA(アメリカ農業省)のデータでは自家結実しません。

* マーチャントやモロー等、世界的に自家結実しないとされている品種を
自家結実する苗として販売しているのは日本だけなので導入には注意が必要です。

現在、日本国内で入手出来る海外産品種の殆どは既に過去の品種、若しくは
産出国で保護するに値しないと判断された程度の品種で甘果・酸果共に魅力がありません。

日本では「嗜好レベルに至らない果実品質」の「既にclassicと評される品種」が殆どです。


中国産品種 2014 月山錦 500円玉大の極大粒品種

結実率最低品種 何年栽培しても収穫に至らないケースも珍しくない品種で管理に工夫が必要。
多少コツは掴んだが10号鉢の小さな木とはいえ30数粒の収穫では話にならない


海外産出品種導入時の注意点


1)特性や栽培方法などは日本国内には正しい情報が皆無です。

2)国内に流通しているものは本物ではない可能性が有ります。

3)現在、日本に導入されている自家結実する海外産出品種は果実品質が非常に劣ります。

4)日本に存在する全ての木がウィルス感染している品種が複数有ります。(酸果・甘果共に確認されている)

5)アメリカンチェリーの名称で園芸店等で売られている苗はビングではありません。

*輸入自由化により安価な果実が輸入されるようになったビングは国内で生産するメリットが無い為に
本物のビング苗は生産されなくなっています。









植え付け

休眠期に根を消毒して植え付けます。

*農水省のHPに有る果樹園の土壌作りに関する資料では
サクランボは深根性の果樹に分類され
植え付ける場合は深く耕起する事とされている。

主幹は30〜40cm程度に切り詰めますが
サクランボは不定芽が出難いので芽の位置を確認して
切り詰めるようにします。

特に植え付け年にはほぼ100%不定芽は発生しません。

主幹の切り詰めは植え付け時のワンチャンスです!


倍土は果樹栽培で最も重要な管理項目なので
その果樹に適する倍土は農水省や産地果樹試験場の
「果樹園の土壌改良基準」に準じて作ります。


サクランボはPH5.0〜6.0の酸性の土を好むので
PH6程度を目標に土を保ちます。






2011年 植え付け当年・切り戻した紅ゆたか(10号鉢)

主幹形にする場合でも切り戻し
主枝と主幹候補の枝を大きく伸ばす


果樹試験場による鉢栽培での施肥効果の試験では
窒素肥料分として5年間硫安を使用し
試験終了時の6年樹となった段階では
一番Phの低いもので土壌Ph4.4まで下がったが
この酸性土壌が問題となる事も無く
サクランボは酸性土壌にはかなり強い樹種と言えます。





2012年 樹形と花芽作り中の紅ゆたか(10号鉢)

誘引により頂芽優勢を分散させ
前年枝に花芽を作る



潅水

生育の為には過湿・乾燥共に良くありませんが
特筆するほど乾燥・過湿に弱いわけではありません。

素人情報では過湿に弱いという話ばかりですが
「サクランボは乾燥に弱い」が正解です。

常識の範囲で潅水していれば問題はありませんが
乾燥ストレスは花芽形成に異常をきたす為
夏季の水切れには注意が必要です。

*夏期に水切れをさせる事で
花芽分化が促進される事は絶対にありません。




根が多くの酸素を必要とする樹種で根の呼吸の為に気層の確保が必要ですが(粘土質はNG)
その様な土質は結果として水捌けの良い状態となります。

これは、サクランボだけに限らず全ての植物に共通している事ですが
「水捌けの良い土を好む」という事と「乾燥気味を好む」という事はイコールではありません。

サクランボに関する複数の研究資料の内容を総括すると
「根の呼吸を妨げる土壌内の滞水は良くないが乾燥には弱いので注意する」・・となります。






剪定

全ての果樹で同様ですが地植えと鉢植えで
剪定方法が変わるわけではありません。
果樹は結果習性に基づいた剪定が基本です。

幼苗の内は間引き剪定が基本ですが
植え付け時に主幹を切り詰めた鉢植えの場合は
間引きが必要なほどの新梢の発生は無いので
植付け当初は冬季に新梢先端を少し切り詰める程度です。

*多くの枝が発生した場合は樹冠内部の日照が劣り
枝の上がりの原因となる為
多くの枝を残し過ぎない様に間引きが必要です。

本格的な剪定が必要になるのは
植え付けてから4〜5年後の事ですが
それまでに
花芽の出来方や
開花・結実状態を観察していれば
剪定方法は自ずと理解できます。


果樹の剪定は高難易度の作業です。
育て始めて1〜2年の状態(結実させた事が無い)で
剪定時期や方法が分からない場合は
まだまだ剪定を考える段階に有りません。






2013年 3年樹の紅ゆたか 40cmスリット鉢

樹形を作りながら前年に作った花芽で収穫を開始
枝先端付近から発生した新梢は冬季剪定まで残す事。


*結実するまでは誘引と樹勢のコントロール
病害虫の防除のみに注力し
剪定の事など考える必要は無い。

*果樹栽培に慣れていない内は
枝が伸び出すと直ぐに剪定したがるが
それが大きな間違い。




2014 ナポレオン



剪定量が多過ぎると樹勢が弱まり
生育不良となる場合があり注意が必要です。
また、傷口が塞がりにくいので
太い枝を切ると枯れ込む場合があります。

サクランボでは花束状短果枝による収穫を
中心に行う必要があります。

*特に佐藤錦・ナポレオンでは
花束状短果枝による収量が大半を占めている為
その維持を考慮した剪定が重要になります。

不定芽は余った養分のはけ口として発生します。
不定芽の発生が多い=多肥であり
施肥管理不良と判断する事が出来ます。

鉢栽培においては不定芽の発生は殆ど無い
と考えて間違い有りません。

皆無では有りませんが
アテに出来るレベルにはありません。

仮に発生したとしても
思い通りの新梢が確保出来る可能性は
限りなく無いに近いものです。



剪定跡からの不定芽(自作接木苗2年目)

発生当年には1つの花芽+葉芽となり
新梢は伸びず花束状短果枝の様に固まった


サクランボの剪定は冬季剪定と新梢の伸びが止まってからの夏季剪定(ほぼ不要)だけです。
短果枝を作る為の摘心以外では枝が動いている最中は枝が暴れる原因となるので切り詰め剪定は行いません。

地植え栽培の幼苗からの整枝剪定や樹形管理の方法は農水省のHPに図解入りの資料が有ります。




摘心および結果習性

基本的に2年枝以降に花芽が付くので、棒仕立ての場合は翌年(2年目)から
切り詰めて新梢を伸ばしても3年目から収穫出来ます。(主枝の枝元に花芽が付き2年目に結実する場合も有る)


又、極稀に新梢に花束状短果枝が付き翌年に枝の上がり無く収穫に至る場合もあります。

新梢に付いた花束状短果枝に結実した前年に自作した接木苗(佐藤錦・大泉系)



枝梢管理・花芽作りの為に摘心は有効な作業ですが
新梢の伸びが止まってからの夏季剪定と短果枝作りの為の摘心は行う時期も目的も全く別な作業です。

伸びた新梢の付け根付近に花芽が付くか、新梢が伸びずに花束状短果枝になるか
伸びる筈の新梢を摘心してしまう事で花束状短果枝にするかの違いだけで
摘心をしなくても適正な樹勢で育てていれば必ず花芽は付きます。

剪定や摘心をしなければ花芽が付かない場合は樹勢のコントロールが適正ではありません。

摘心をしなければ新梢の付け根に花芽が付く(紅てまり)



2013 佐藤錦(8年樹)


当園で一番古株の佐藤錦・7年間毎年使用している花束状短果枝の結実・全く不都合など無い


素人情報で良く目にする

「短果枝は2〜3年実をつけると弱って実をつけにくくなるので
基部から切り取って新しい短果枝に更新する」

「一度、結実した枝には2度と結実しないので剪定して短果枝を更新する」

は、実際にその様な木が有るとすれば、それは木の特性ではなく「管理不良」が原因です。



実際に栽培していても、その様な事を経験した事は皆無です。


*花束状短果枝の維持に関する山形県果樹試験場の研究調査段階でもその様な事実は報告されていない。
そのレポートには「花束状短果枝は10年間は維持可能なので枯死させないように管理する事」とある。


夏季剪定や摘心は時期や方法を誤ると上記したような弊害が発生するだけでなく
枝の上がりの原因となるので栽培地での適期と方法を自分で判断出来ないなら行わないようにし
冬季剪定までは放置するようにします。


摘心をすれば花束状短果枝となる(紅てまり)

鉢栽培では摘雷は不要
授粉が難しい・生理落下の多い果樹では結実状況を確認した後、多すぎると思えば摘果する。


本当に花芽の更新が必要な場合は計画性をもって結果母枝を更新します。
*特に鉢植えでは切って新梢を出させるのではなく更新する枝を確保してから切ります。





特殊な栽培方法


一本整枝

経済栽培において鉢栽培による画期的な密植栽培法として推奨されていますが
現在では、この仕立て方による地植えでの密植栽培での経済栽培も行われています。

管理の手間と上方向へのスペースは必要ですが幅を取らない事で狭小なスペースで栽培出来る為、
趣味栽培にも最適ですが見た目の美しさの無さと他の樹形と比べ果実品質が劣る事が致命的な欠点です。
(特性は樹形の頁を参照して下さい)



一本棒3年枝栽培

養生枝(結実しない1〜2年枝)を確保する必要性から結果母枝の本数が少なく
摘蕾・摘果せずに葉果比を保てる・摘心や葉摘み等の労力を減らせる事が利点となります。

営利が目的でも無く・作業も楽しみの一つでもある趣味の鉢栽培でのメリットは皆無です。
栽培地や気象条件によっては大きなデメリットのある整枝方法なので
趣味栽培程度の労力の少しの手抜きの為に敢えて大きなデメリットを背負い込む必要性も感じません。


その他にも我流的な幾つかの栽培方法が有りますが、本当に特殊と言えるのは一本整枝だけで
他は一本棒3年枝栽培同様に基本を行う為の手法を変えただけのものです。




整枝する際のちょっとしたヒント

近年のサクランボの摘心・剪定技術の進歩には目を見張るものがあり
摘心の方法によっては新梢の先端だけ葉芽・基部から他の芽は全て花芽とする事も出来ます。(中果枝・長果枝栽培)

但し、長果枝・中果枝栽培の場合は花芽を付けた部分は翌年は花が咲くだけで葉は茂らず禿げ上がるので
鉢果樹で小さく纏めておきたい場合には不都合です。





適期に摘心せずに伸ばした新梢を
翌春に枝元の花芽とその先の葉芽1つ残して
剪定してしまうのを長果枝栽培としている例もあるようですが
それでは単に剪定時期をずらした短果枝栽培で
上記方法による本当の長果枝栽培とは異なります。

摘心の適期が分からないので放置したが
その枝は要らないので剪定したい場合は
上記方法が簡単で失敗しません。

農水省のHP内に有る資料で
通常の整枝方法として紹介されています。



通常2年枝に花芽が付きますが
その場合は花束状短果枝の沢山付いた長い枝です。
(正しくは結果母枝と言います。)


この様な結果母枝を長果枝としているケースもあるが
これが長果枝ならサクランボには短果枝は存在せず
結果枝の全てが長果枝・・と言う事になる。



白肉タイプの為、果実着色の促進に葉を束ねたが
他の果樹同様にサクランボも着色と糖度は無関係。


おりひめの季節・サミット等の赤肉タイプは
果実の着色に果実への日当たりを必要としない




果実着色の為には日照が必要なので
着色期には反射シート等を鉢の周りに敷きますが
葉に日当たりの悪い下部の枝でも
FullSunの30%以上の日照が有れば
大きさ・糖度等の果実品質は
日当たりの良い部分(FullSun)と変わらない
という果樹試験場による調査結果があるので
全ての枝葉がFullSunを必要とする訳ではありません。
*木自体はFullSunが基本

枝の配置や剪定は上記した様な
その果樹の特性を考慮して決定します。

*FullSunとは晴天時に6時間以上連続して
直射日光が当たる事と定義されています。




紅秀峰 3年生

サクランボは開花と展葉が同時


佐藤錦 3年生

サクランボの花として紹介されているもので
葉が無く花だけが咲いているものは暖地桜桃

授粉

自家不和合性品種が殆どのサクランボでは
S遺伝子型の違う品種で授粉する必要がありますが
S遺伝子型の違いだけでなく
品種間の相性が大きく結実率に反映されます。

多くの主要品種に付いては
S遺伝子型や品種間の結実率も調査されていますが
民間育種の品種では不明なものも多く
当園では「おりひめの季節」「夢あかり」「芳玉」
「寿錦」「絢のひとみ」の5品種のS遺伝子型が不明です。

*優秀な品種・その地域で特産品種にしたい等の
経済的な意図の有る品種でないと調査されません。

主な品種のS遺伝子型
佐藤錦 s3s6
ナポレオン s3s4
高砂 s1s6

S遺伝子型の片方が異なる場合を不完全和合
双方が異なる場合が完全和合となりますが
完全和合が不完全和合よりも
結実率が優れる訳ではありません。
*全く無関係。

サクランボでは10%以上の結実率を「親和性あり」
10%未満〜2%を「要検討」
2%未満を「親和性無し」と分類しています。


品種や木毎の開花期は年により異なり、前年に最後に開花したものが翌年には早めに咲いたりと
年毎の条件や状態により一定ではありません。(同じ佐藤錦でも鉢毎に開花期が異なる)

開花期を紹介(例・ナポレオンと同時期に開花等)している調査資料もありますが
調査地においての傾向であり、栽培地が異なれば品種毎の開花のタイミングも異なります。


親和性の有るA・Bの2品種間においてA→BとB→Aの結実率は異なり
組み合わせによってはA→Bは抜群に良いがB→Aは非常に劣る場合もあります。

相互受粉で共に相性の良い関係を持った品種の組み合わせは極々限られたものになります。

栽培本数が少ない場合でも、それぞれの結実率を考慮した最低3〜4品種以上の栽培がお奨めで
結実率の良いA→B・B→C・C→Aの様な受粉関係を作ると収穫量が増えます。

実際には品種間の受精率の違いだけでなく
受精し易い花芽と条件を作れるか否かが結実率に大きく影響するので
結実率は受粉樹の選定よりも管理方法で決定される要素が高い事を理解し
結実し易い花芽を作る為のサクランボの特性を知る事の方が重要です。





遮光

直射日光下に於いては
樹体温度が気温よりも大きく上昇する場合があります。

気温が30℃前後の夏季の炎天下では
樹体温度が40℃以上に上がるという
サクランボに関する実測データが有りますが
遮光する事で樹体温度の上昇を抑える事が出来ます。

サクランボは開花期には前年に蓄えられた養分で活動し
葉も展葉開始したばかりで
光合成に頼らない状態のため
遮光率100%の資材を使用しても
影響は殆ど無いとされています。

遮光した場合、葉や樹体からの水分の蒸散(気化熱)で
樹体温度は外気温度よりも1〜2℃低くなる傾向が有り
暖地では開花期や花芽形成初期の遮光は
結実や花芽形成に悪影響を及ぼす
温度上昇を防ぐ為の非常に有効な防御手段となります。

この様な場面においても
樹高も低く移動も可能な鉢栽培では
遮光や日陰に移動する事が容易に出来るので
その機能が充分に発揮されます。

2014 おりひめの季節



2014 佐藤錦






2014 紅さやか


サクランボの施肥は独特なものがあり
他の果樹と比べて基肥や追肥等
それぞれの施肥の役割が極端に明確です。


施肥

施肥は土に残っている養分の不足分を補うのが大前提です。
地植え・鉢植えに拘らず
一定量を定期的に与えれば良い訳ではありません。

何時では無く、どの状態の時に施肥するかが重要なので
自園での生長サイクルの把握が必要です。

基本的な施肥適期ははっきりしていますが
1鉢ずつ樹勢を見ながら調整しなければなりません。

果樹の中でも特に肥料に鈍感で反応が遅いため
適正量の見極めが非常に難しく
施肥管理による樹勢コントロールが
果樹の中で一番難しいのがサクランボです。

苦土欠乏に弱く葉が黄変し早期落葉してしまうので
肥料成分の流失の有る鉢植えの場合は特に注意します。

開花・結実・果実肥大は前年の貯蔵養分で賄います。
その為の秋肥の重要な果樹です。


サクランボの木の特性を正しく理解していれば不定芽が容易に発生する程の樹勢は
収穫に悪影響を与える事は有っても良い事は何ひとつ無い事が理解できます。

樹勢を弱めてしまう事は良く有りませんが強樹勢にもならない様に施肥管理に注意します。






2014 前年の接木に結実した天香錦





育成診断

施肥に対して鈍感な為、サクランボの管理で一番難しいのが樹勢のコントロールとなります。

複数の園芸試験場で樹勢と果実品質・収穫量に関する調査や試験がされていますが
樹勢の強いサクランボでは花芽数・開花数・結実率・果実品質・収穫量の全てが劣る結果となっています

山形県の試験場で農家2箇所に於いて複数本のサクランボを対象に
3年間の追跡調査を行った結果からサクランボ農家が自園での適正な樹勢を診断する方法として
「新梢の伸び具合」で判断する方法を開発しましたが
それが結実させる苗の目通りの高さの新梢を1年間に30cm以上伸ばさない(無剪定で)樹勢管理方法です。

新梢がそれ以上に伸びてしまう場合は樹勢が強すぎで、新梢が全く伸びない場合は樹勢が弱すぎます。

地植えの成木では目通りの高さで放置した新梢が20cm〜25cm伸びるのが適正な樹勢とされていますが
枝の長さでは無く樹勢の問題なので剪定でその長さに枝を切り詰めても無意味です。


2014 夢あかり




鉢植え果樹の果実

鉢栽培された果樹へ実った果実は地植えのものよりも糖度が高くなる事は既に立証されている事ですが
糖度だけに止まらず味・香り・風味の全てが凝縮された味の濃い果実が収穫出来ます。

この味を知ってしまうと購入した果実は水っぽくて味も薄く全く美味しいとは思えません。

2014 紅てまり





低温要求時間


他の果樹同様に一般的には8月下旬〜9月初旬には休眠を開始し、10〜11月が最も深い休眠に入り
12月〜1月に低温に遭遇する事で徐々に休眠から醒めていき1月中旬〜2月中旬には自発休眠から覚醒します。

低温要求を満たし自発休眠から覚醒した果樹は寒さで動く事が出来ずその状態を他発休眠と言いますが
外的要因での休眠状態の為、他発休眠から覚醒できる気温となった段階で一斉に芽が動き出します。

低温要求量が不足した場合には自発休眠から覚醒していない状態で春を迎えてしまうため
芽の動き出しが「遅れる」「一斉に行われない」「品種によりバラつく」状態となり授粉作業や結実率に不都合が生じます。
*栽培品種にもよりますが、受粉に困る程、品種による開花期が異なる場合は栽培不適地の可能性があります。

果樹の自発休眠覚醒に必要な低温要求量の解析方法は複雑で
サクランボの場合は日最高気温が15℃を下回る平年到達日を積算開始日としたchill unitで
年次や地域によるばらつきの少ない低温要求積算量が算出できます。

佐藤錦の場合は上記の方法による積算でchill unit1500で
切り枝や鉢植えでも同様の結果となり7.2℃以下に何時間というものより精度の高い解析方法ですが
果樹全般において国内での休眠に関する研究はアメリカ等の先進国と比較して非常に遅れています。


2014 紅ゆたか



佐藤錦の場合
−4℃と10℃で係数0.6と低く
−1℃と5℃が0.9
2℃が1となります。

注)chill unitでの温度と効果係数・積算数は品種により異なります。

又、品種により差はあるものの休眠覚醒に有効な温度の下限は−5.8℃〜−5.3℃
上限は12℃〜12.7℃となっています。

以上の事から低温であっても効果の高い温度域と効果が薄れてしまう
若しくは無くなってしまう温度域が有る事が理解できます。

当園(関東中央内陸部)では2月初旬〜中旬に佐藤錦のchill unit1500を満たす事が出来ます。

旧来の考え方でも佐藤錦の低温要求量が1650時間と言うのは山形県での事であり
冬季にそれより温暖で休眠覚醒に効果の高い温度域の多い地域では要求量を早く満たせるので
1650時間を他の地域での栽培に当てはめて栽培難易度を云々したり
単純に冬季の気温が東北並みに低くなければ栽培が難しいという考え方は明らかに間違いです。
*因みに7.2℃以下の積算方法では山梨県では1400時間(佐藤錦)と山形県より250時間短い。





管理の適期

○月に何をする・・と言う事は敢えて明記しません。(できません)
桜の開花前線の北上を考えれば地域により最大1ヶ月ほどのズレが有る事は容易に理解出来ます。

サクランボは果樹の中でも特に生長サイクルが早く
花芽形成のステージは2週間程度で次の段階へ移行してしまうので
1ヶ月もズレたのでは栽培地により状態は大きく異なり管理作業の適期も全く異なります。

以上の事から、当園の作業適期は他所では適期とはならない為、
何時・何を行うかは当HPでは表記致しません。


今年の管理が翌年の収穫に直結するので、常に翌年を意識した管理が必要


2013年は当園と山形では開花盛期に1ヶ月の違いがありました。
以上の事から生長サイクルの早いサクランボの全国共通の栽培カレンダーなど作れる筈がありません。

サクランボは品種により花芽分化の開始時期やその後の発達速度が異なりますが
佐藤錦・高砂・ナポレオン以外の比較調査は行われていない為
「主要品種である佐藤錦に準じる」・・と言うのが基本となります。


自分の栽培環境下において 何時・どの状態にあるかを把握する事が
管理作業の適期を決定するので、その知識がサクランボ栽培の最重要項目となります。





早期収穫する為の幼苗育成の基本的栽培管理(棒苗からの育生)

鉢栽培用に導入する際は必ず1年生苗木を導入します。
鉢植えで育てる場合は台木品種による差は無いので安価な青葉台が推奨されます。


1年目
棒苗からの栽培の場合1年目には新梢を大きく伸ばししっかりと誘引を行います。
これが主枝となるので1年目の管理が非常に重要です。

生長中の枝は上へ立ち上がろうとするので枝が湾曲しないよう誘引を工夫します。
この時点で誘引があまいと頂芽優勢の影響で枝元の樹勢が劣り、後々枝元が禿げ上がりやすくなります。

又、主枝・亜主枝は永久枝と呼ばれ基本的に更新しません。
特にサクランボでは太い枝の剪定には注意しなければならず
固まった枝の誘引作業も鉢植えでは特に苦労する事から主枝は発生した年に角度を決定します。

伸びた新梢の剪定(先刈り・先端を少し切る程度)は冬季に行い生長中は誘引以外の整枝はしません。
*夏季剪定はしません。

生長中は少量の肥料を切らさない様に与え続けます。

1年目のポイント・大きく育て、しっかりと誘引する


2年目
前年枝(主枝)に花芽が出来ます。
新梢が発生してきた場合は側枝とする為に摘心せずに水平に誘引します。
*主枝の枝元近くの新梢は花芽の確保目的に摘心し枝の上がりを防止する。

主枝を伸ばしたくなければ先端から発生した新梢は摘心して花束状短果枝にしますが
基本的には生長期には枝先端と付近の新梢は伸ばし葉芽1つ残して冬季剪定します。
*生長期には主枝の枝元から発生した新梢のみ摘心し先端とその付近から発生した新梢は伸ばすのが基本です。
*夏季剪定はしません。

前年に伸びた新梢の枝元に花芽が付き2年目で開花・結実する場合もあります。

生長中は少量の肥料を切らさない様に与え続けます。

2年目のポイント・前年枝の枝元から発生した新梢を適期に摘心する
植え付けてから摘心までの1年間で自園での摘心の適期を学習しておく



3年目
普通に育てていれば、初収穫の年となります。
直上する新梢や込み合う部分から発生した新梢は摘心して花束状短果枝とし
枝の欲しい部分から発生した新梢は水平に誘引しながら収穫と樹形作りを行います。

木を作る事を優先し本当に要らない新梢だけ摘心し枝数を増やすようにします。(増やし過ぎないよう注意)

樹冠を小さくしたい場合の切り戻し剪定が必要な時はこの年の冬から行います。

結実させる事で樹勢も落ち着き新梢の伸びも緩慢になるので
多少の強剪定を行ってもそれまでの様に新梢が伸びまくる事はありません。

この年に少量でも結実させる事が出来れば翌年から収穫量が増えていきます。
この樹齢から収穫をする為の施肥管理に切り替えます。


3年目のポイント・新梢管理は前年と同じ事の繰り返し
元肥の為に8月までに施肥の適期と施肥方法を理解しておく



4年目以降
棒苗からの育成の場合、2〜3年目の収穫は全てが主幹や主枝上へ結実した果実ですが
2年目に伸ばした新梢(側枝)へ結実するようになり本格的な収穫へとなっていきます。

鉢栽培では通常の主枝・亜主枝・側枝という構造までの大きさに育てたくない場合もあります。
臨機応変に対応しますが各枝の役割を明確にした樹形作りを心掛けます。

4年目の以降のポイント・3年目までの状況を良く観察し記録しておく事が作業適期の判断材料となります。
今まで学習していなかった特性等の学習が開始出来れば尚良





樹齢が上がり木が大きく育たなければ結実しない果樹では有りません。

木の年齢や大きさにかかわらず適正に管理すれば3年枝には確実に開花・結実させられる果樹なので

3年生以降になっても

開花しない
開花したにもかかわらず結実しない
開花数の割りに結実が少ない
収穫は出来たが果実が美味しくならない場合は

管理の根本的な見直しが必要となります。



前年に棒苗を植え付け翌年結実した佐藤錦(10号鉢)


前年に棒苗を植え付け翌年結実した紅さやか(8号鉢)






プロ(研究者)の世界ではリンゴや梨と共に非常に研究の進んだ果樹で
樹形と花芽数・結実率・果実品質の関連性や各品種間の受精率・倍土・施肥など数多くの研究調査レポートが有り
収穫する為の栽培や管理の難易度は高い果樹ですが栽培情報に困る事は殆どありません。



研究費は審査の上で必要と思われたものにのみ助成されるので役に立たない果樹の研究論文は存在しません。

その内容を理解出来なければ仕方有りませんが
「研究論文の殆どは役に立たない」等と発言しているガッカリな農家さんも居るようです。

しかし、現在では当り前の様に行われている摘蕾・摘果・ハウスによる雨避け・人工授粉・マメコバチの活用
反射資材による着色促進・高接ぎによる品種更新・低樹高化等の栽培技術の指導推進・病害虫とその防除や
長距離輸送用の保冷容器に至る技術まで、園芸試験場の研究報告から普及されたものであり
プロ(研究者)による研究の恩恵が無ければ現在のサクランボの経済栽培は成り立っていません。



当HPでは試験場や大学等の研究資料にて科学的に裏付けの示せない内容は記載していません。
勿論、相手は生き物なので例外はありますが、例外は栽培の主軸とはなり得ません。



難易度の高い果樹ほど素人はプロ(研究者)に学ぶ必要があると痛感する果樹です。


少なくとも趣味や農家程度のブログや園芸相談の掲示板等の内容は参考にするだけ無駄です。

*「反面教師として活用できる」などと言う意見も頂きましたが
その内容の何が悪くて・何が良いかの区別が出来なければ何を反面として捉えるかの判断は不可能ですし
判断が出来る知識が有るなら元々が見る必要などありません。


*本当のプロは相談掲示板や素人のブログ程度のものには絶対に出没しません。


各産地の園芸試験場等で研究された資料から果樹としての特性や
自分の栽培地での作業の内容と適期を判断できる知識を得る事が成功への最短距離の近道です。





農水省のHPにはサクランボや各主要果樹を知る為に樹種毎に総合的にまとめた資料が有ります。
農家指導用の素人にも分かり易く書かれている資料なので内容的には濃いものでは有りませんが
鉢栽培にも役立つ情報が満載でその資料だけでも最低限の栽培に困る事はありません。
果樹を栽培するなら最低限この程度の資料には目を通しておく事をお奨めします。






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